企業ができる予防接種促進のための取り組み

企業において、感染症対策のために予防接種を受けることを促進する仕組みを導入したいと考えたとき、具体的にどのような施策を導入すればよいかお困りではないでしょうか。
本記事では、企業の具体的な予防接種促進のための取り組みについて、いくつかご紹介します。

予防接種費用をサポートする

自治体や、加入している健康保険組合の助成が受けられることを知らずにいる従業員もいます。従業員には、まずは助成が受けられる可能性があることを伝えることが大切です。
また、予防接種に対して全額あるいは一部の費用の助成を行っている企業もあります。各社の状況によって、助成額の設定も選択肢に入れてみるとよいでしょう。

自治体の助成がある予防接種を調べて、社内に周知する

企業が加入している健康保険組合の助成について、社内に周知する

企業で予防接種費用を助成する

一部または全額助成など、企業の財務状況に合わせ決定しましょう。希望する全従業員を対象とする場合など、一定の基準を満たすことで、税務会計上、「福利厚生費」として損金に算入することも可能です。

福利厚生でカフェテリアプラン**を導入している企業は、ポイントの使用対象にする

*一定の基準とは、以下の通りです。

・機会の平等性:全従業員を対象とするものであること。

・金額の妥当性:支出する金額が、常識的に考えて妥当な範囲であること。

**カフェテリアプラン:従業員が一律の福利厚生を享受するのではなく、支給されたポイントの範囲内で用意された福利厚生メニューから自分で選べる制度

職場で実施する事業所内接種

企業で従業員へ予防接種を実施する場合、医師や看護師に企業に出向いてもらい、職場で予防接種を行う、などの事業所内接種が候補に挙がります。出勤した職場で、そのまま予防接種が受けられる事業所内接種は、従業員がわざわざ自社から出かける必要がなく、手軽に接種を済ませられるというメリットがあります。

2015年に「医療機関外の場所で行う健康診断の取扱いについて(平成7年11月29日健政発第927 号厚生省健康政策局長通知)」が改正され、届出があれば医療機関以外でも予防接種を行うことが可能になりました。これにより、医師や看護師に企業へ出向いてもらい、職場で予防接種を行う事業所内接種が可能になっています。実施に先立ち医療機関では手続きが必要となりますので、対応可能かどうかも含め、まずは早めに医療機関や産業医に相談することが必要になります。

集団接種のイラストイメージ

予防接種を受けやすい環境づくり

職場で「明日は予防接種なのでお休みします」と気軽に言える雰囲気がなければ、なかなか医療機関に行けない従業員も多いため、企業全体でサポートすることが重要です。

雇用時に、免疫状況を把握するサポートを行う

新たに従業員を雇用する際は、感染症の罹患歴や予防接種歴の確認を促す良い機会です。従業員が自身の免疫状況を把握するようサポートすることで、企業から各従業員へ、接種した方が良いワクチンを提案することができます。
なお、各従業員の免疫状況は個人情報の中でも不当な差別、偏見などの不利益が生じないように取り扱いに特に配慮すべきとされる「要配慮個人情報」に該当します。このため、収集する場合には原則として本人の同意を得る必要があり、保管、管理など個人情報保護法に基づき厳格な取り扱いが求められます1)

予防接種を受けるための外出を認めたり、特別休暇を付与する

仕事をしながらでも予防接種を受けやすい職場環境が整っていることは重要です。

感染症や予防接種の情報提供・啓発活動

日頃から、企業内で感染症や予防接種の情報に触れる機会を積極的に作ることで、企業全体の感染症対策への意識も向上していきます。

行政機関等が作成した感染症の啓発ポスターなどを掲示する

社内報などで、感染症についての知識や予防接種の重要性を伝える

感染症に関する教育研修会を開催する

重症化の可能性の高い、基礎疾患などを持つ従業員へ、抗体検査や予防接種を推奨する

感染症に関する教育研修会のイラストイメージ

出張先での感染症流行に対応する体制を整える

国内では問題となっていなくても、海外では地域ごとに対策しておくべき感染症が存在する可能性があります。また、新型コロナウイルス流行下においては、国内においても流行地域への移動自粛の動きも見られました。
従業員の出張があるならば、国内外を問わず事前に出張先で注意すべき感染症についても調査が必要です。

国内外の感染症流行地域を常に調べておき、従業員の出張先が該当する場合には、流行している感染症の抗体検査や予防接種を推奨する

流行情報は以下のサイトで知ることができます。

出張のイラストイメージ

1)個人情報保護委員会 資料1 要配慮個人情報に関する政令の方向性について

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