企業内で従業員に対し、ワクチンの事業所内接種を行うには、何から始めたらよいのでしょうか。あらかじめ決めておかなくてはならないこと、用意しておくことなどについて、基本の項目をご紹介します。
1.ワクチンの種類と接種人数
まずは、事業所内接種を行うワクチンの種類と必要な本数を把握する必要があります。
何のワクチンを接種するかは、目的によって変わるでしょう。周囲の流行状況等を踏まえてインフルエンザや麻しん、風しんワクチンを接種するのか、海外出張者のために、出張先で注意しなければならない感染症予防のワクチンを接種するのか。まずは何の種類のワクチンを接種するのかを明確に決める必要があります。
種類が決まれば、本数についても検討します。社内でワクチンについて案内し、希望者を募りましょう。
2.接種者リスト
1.の情報をもとに接種者のリストを作成します。依頼先の産業医や医療機関に提出する際に必要になるだけでなく、誰がいつ何のワクチンを接種したのか、社内の接種状況を把握することにも役立ちます。
なお、各従業員の接種状況は個人情報の中でも不当な差別、偏見などの不利益が生じないように取り扱いに特に配慮すべきとされる「要配慮個人情報」に該当します。このため、収集する場合には原則として本人の同意を得る必要があり、保管、管理など個人情報保護法に基づき厳格な取り扱いが求められます1)。
3.実施時期
接種予定の従業員たちや運営部署、会社全体としてなるべく無理のない時期を検討し、実施時期を決定します。
ただし、感染症の種類によっては、毎年流行時期がおおよそ決まっているものがあります。例えばインフルエンザは、10月から12月半ばまでのワクチン接種が推奨されています2)。
4.実施場所
事業所内接種の実施場所を社内のどこにするのか決めます。基本的には、依頼先の産業医・医療機関から地域の保健所に対して、「診療所開設の届出」をしていただく必要があります3) ※。
※一定の要件を満たせば巡回診療の届出だけですむ場合もありますが、『衛生上、防火上及び保安上安全と認められる場所を選定し、かつ、清潔を保持するよう留意させること』など諸条件があります3)。詳細は産業医・医療機関にご相談ください。
5.医療機関・産業医への相談
1~4の項目を決めたら、いよいよ医療機関や産業医に相談します。診療所開設の届出などは各保健所の状況により審査にかかる期間も異なりますので、早め早めの相談を心がけましょう。
- 1)個人情報保護委員会 資料1 要配慮個人情報に関する政令の方向性について
- 2)厚生労働省 インフルエンザQ&A
- 3)厚生労働省「巡回診療の医療法上の取り扱いについて」及び「医療機関外の場所で行う健康診断の取扱いについて」の改正について(平成24年10月1日)