”帯状疱疹”

赤い発疹が帯状にでき、痛みを伴う

帯状疱疹は、体の左右どちらかの神経の流れに沿って、多数の赤いブツブツした発疹ができる病気です。この発疹が帯状に生じるところから“帯状疱疹”という病名が付きました。ピリピリ、チクチクした痛みを伴うのが大きな特徴です。

原因は、水ぼうそう(水痘すいとう)を引き起こす「水痘すいとう・帯状疱疹ウイルス」と呼ばれるウイルスです。

帯状疱疹は、60歳代を中心に50~70歳代に多く見られますが、過労やストレスなどで若い人に発症することもあります1)

帯状疱疹の症状
図:帯状疱疹の症状
帯状疱疹の発症数・発症率と年齢2)
図:帯状疱疹の発症数・発症率と年齢

外山望. MB Derma 2020; 297: 21-29, P.24.より作図

免疫低下でウイルスがよみがえる

水痘すいとう・帯状疱疹ウイルスにより水ぼうそうを発症するのは1回きりですが、ウイルスはその後、脊髄近くの神経節と呼ばれる部位などに潜伏し続けます。そして、加齢、重い病気、過労などで免疫力が低下すると、再び活性化します。
活動を再開したウイルスは増殖し、神経を傷つけながら移動し、皮膚にたどりついて表皮細胞に感染し、さらに増殖して、赤い丘疹や水疱が神経に沿って帯状に出現します3)。これが帯状疱疹です。
通常、痛みは赤い発疹が治るとともに軽くなりますが、皮膚の症状が治まった後も長期間にわたって痛みが続く場合があり、これを、帯状疱疹後神経痛(PHN)といいます。
加齢とともにPHNへの移行リスクは高くなり、50歳以上の帯状疱疹患者のうち約2割がPHNに移行すると報告されているため4)、注意が必要です。

帯状疱疹の痛みと時間経過5)
図:帯状疱疹の痛みと時間経過

:皮膚および神経炎症の痛み
※※:神経変性による痛み

比嘉和夫. 治療. 2008; 90(7): 2147-2149. より改変

予防にはワクチンという選択肢も

帯状疱疹は免疫力の低下によって発症するため、帯状疱疹の予防には、日頃の体調管理が重要です。食事や睡眠をしっかりと取り、適度な運動や、リラックスした時間を持つことでストレスを減らし、免疫力を低下させないように心がけましょう。

体の左右どちらかにチクチクするような痛みを感じ、その後、帯状に赤い発疹や水ぶくれが広がってきたら、できるだけ早く受診することが大事です。

治療にはウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が用いられます。疼痛期間の短縮と重症度の低減効果による生活の質(quality of life:QOL)向上が期待されます6)

一方、50歳以上の方には、帯状疱疹を防ぐワクチンがあります。水痘すいとう・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を高め7)、帯状疱疹を予防することができます。免疫抑制状態の方など帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の人が接種できるワクチンもあります8)。(※予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありません)

帯状疱疹は高齢者に多い病気で、症状が遷延しやすい上、回復後も痛みが残るPHNを発症する場合があり、日常生活や労働に支障を来すケースがあります。発症してから治療するという考え方より、帯状疱疹を発症する前に予防するという考え方が望まれます。

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