風しんの第5期定期接種とは
企業で取り組み、集団感染リスクを低下させる

風しん第5期定期接種は国による成人の風しん対策の制度です

厚生労働省は子どもの頃に風しんワクチンの定期接種を受ける機会がなかった1962年4月2日から1979年4月1日までに生まれた約1,537万人の男性1)に対し、原則無料で風しんの抗体検査を受けることができ、抗体がない人はさらにワクチン接種も受けられる制度を実施しています(風しん第5期定期接種)。

風しん第5期定期接種の流れ
対象者

1962年(昭和37年)42日~1979年(昭和54年)41日生まれの男性

期間

2019年~2025(令和7年)年331日まで(延長されました)

内容
  • 2019年に開始された国による風しん対策の制度です。
  • 対象者はクーポン券を使用して、原則無料風しん抗体検査予防接種を受けることができます。
  • 健康診断でクーポン券を使った抗体検査を実施することが推奨されています。

「昭和 37 年4月2日から昭和 54 年4月1日までの間に生まれた男性を対象に実施する風しんの抗体検査及び予防接種法第5条第 1 項の規定に基づく風しんの第5期の定期接種の実施に向けた手引き(第4版) 厚生労働省健康局2022年2月16日改正」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000927414.pdf

予防接種を受けるまでの一連の流れ

対象者にはクーポン券が郵送されます

風しん第5期定期接種の対象者である1962年4月2日〜1979年4月1日生まれの男性には、2019年3月から2025年3月まで風しんの抗体検査と予防接種を無料で受けられるクーポン券がお住まいの市区町村から郵送で配布されています2)
クーポン券が届いたら、まずはご自身の風しんの免疫(抗体)があるかどうかを確かめるため、クーポン券を持参して医療機関などで採血をして抗体検査を受け、十分な抗体がないと分かった方は予防接種を受ける運びとなります。
クーポン券は居住地にかかわらず全国の対象医療機関(2022年1月現在およそ5万施設)3)で使用することができます。健康診断や人間ドックを実施している医療機関が本制度に対応していれば、職場の健康診断や個人で受ける人間ドックの際に風しんの抗体検査を受けることも可能です。
風しん抗体検査・風しん第5期定期接種受託医療機関(厚生労働省) 
クーポン券は、記載されている住所と住民票の住所が一致していなければ使用できません。引っ越しをされた方や紛失した方は、現在住民票のある市区町村に問い合わせて再発行の手続きをするようにしてください。

クーポン券様式

抗体検査券、予防接種予診券、予防接種券

「昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性を対象に実施する風しんの抗体検査
及び予防接種法第5条第1項の規定に基づく風しんの第5期の定期接種の実施に向けた手引き(第3版)付属資料
厚生労働省健康局2019年10月31日改正」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000494561.pdf

風しんに罹ったことがある方は罹患記録をチェック

対象者の中で過去に風しんに罹ったことがある方や、風しんの予防接種や抗体検査を受けたことがある方で、それを証明する記録(PCRや抗体検査の結果、接種記録など)を持っている方は、予約や問診の際に医療機関にお知らせください。抗体検査や予防接種を受ける必要がない場合があります。また、このような場合でも希望をすればクーポン券を使って抗体検査を受けることは可能です。

風しんの抗体検査実施フロー

「国の風しん対策活用セミナー〜定期健診等でクーポン券を利用できるようにするには〜」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000546225.pdf)をもとに作成

コラム
子どもの頃に風しんに罹ったと聞いている・・・

風しんは症状のみの診断では他の似た症状の疾患との鑑別が難しく、診断には検査(PCR検査・抗体検査など)が必要です。こうした検査で風しんの感染が確認されていない場合、別の病気であった可能性があるため、抗体検査や予防接種を受けることが推奨されています4)

抗体検査・予防接種の集合契約

本制度では、医療機関は全国の自治体との間で抗体検査と予防接種の委受託の集合契約 5)を締結しています。これにより、医療機関から市区町村への費用請求が可能となり、クーポン券の利用ができるようになっています。
集合契約には、病院や健診施設の他、企業の社内診療所なども参加しています。

コラム
対象者の30.7%が抗体検査を実施済み

本制度の対象者は全国で1,537万人 (2019年4月1日現在)であり、2023年11月までにおよそ471万人が抗体検査を済ませています。これは全対象者の30.7%にあたります1)。 都道府県別では、最も実施率が高かったのは富山県で45.8%、低かったのは京都府で16.0%でした。
厚生労働省は2024年度末までに対象者の抗体保有率を90%とすることを目標にしており、このためには920万人、つまりあと470万人の方が抗体検査を受ける必要があります2)6)

各都道府県別の抗体検査実施者割合(厚生労働省健康局結核感染症課調査)
各都道府県別の抗体検査実施者割合

「風疹に関する疫学情報:2024年1月31日現在」(国立感染症研究所) 
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/2024/rubella240131.pdf

企業の考え方

制度の対象者は風しんの抗体保有率が低い世代

本制度の対象者である1962年(昭和37年)4月2日~1979年(昭和54年)4月1日生まれの男性は、他の世代や同年代の女性に比べて風しんの抗体保有率が低く7)、2018年の風しんの流行時には感染者の中心であったことが分かっています7)。  このことから、風しん対策として2019年度から「風しん第5期定期予防接種」が開始されました。

成人の風しん感染は重症化リスクあり

成人の風しん感染では、子どもと比較して、高熱や発疹が長く続いたり関節痛が見られるなど、重症化するケースが多いことが報告されています8)

また、成人の風しん感染において、感染経路が判明している中で最も多いのは職場での感染です。特に、上記の世代の男性が多い職場では集団感染が発生するリスクがあり、過去にも発生事例が報告されています9)

妊娠初期の風しん感染は危険

とりわけ注意が必要なのは妊娠中の女性です。妊娠中に風しんに感染すると、目、耳、心臓などに先天性の病気(先天性風しん症候群:CRS)を持つ赤ちゃんが生まれる可能性があり、妊娠初期ほどそのリスクは高くなります10)。企業においては、妊娠初期の女性社員や社員の家族を守るためにも、平時からの風しん対策には大きな意味があります。

先天性風しん症候群のリスク

「先天性風しん症候群とは」(国立感染症研究所)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html)をもとに作成

制度を利用すれば企業にも本人にも負担が少なく風しん対策が可能

本制度の対象者の多くは企業に勤務する従業員であることから、厚生労働省は企業に対し、定期の健康診断時に風しんの抗体検査を受けられるように協力を呼び掛けています。風しんの感染防止に企業で取り組むことは、個々の従業員やその家族を感染から守るだけでなく、職場での集団感染発生というリスクを低下させる意味でも重要です。

文献

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