風しんの感染防止に企業で取り組むことは、個々の従業員やその家族を感染から守るだけでなく、職場での集団感染発生という企業リスクを低下させる意味でも重要です。
風しん感染者の多くは成人男性であり、職場での集団感染リスクを下げるためにも職場の対応が必要です。
2018年の風しん患者2,917人を男女別に見ると、男性2,364人、女性553人と、男性は女性の約4倍で、男性患者の約6割は30歳代~40歳代でした(図1)1)。職業別では会社員が全体の約4割を占めていました1)。このことから風しんの感染源として、成人男性の多く集まる「職場」が推定されています。実際にいくつかの企業の職場において、患者が集団発生した事例も報告されています2)。
第5期定期接種の対象となる昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性はまさに働き盛りで、この年代の男性が日常的に集まる職場は風しんの感染源になる恐れがあります。この年代の男性は、アフリカやアジアなど風しんの罹患率の高い地域への赴任や出張の際に風しんに感染し、帰国後に職場で感染を広めるというリスクも考えられます3)。このことから、厚生労働省は企業に対し、定期の健康診断時に風しんの抗体検査を受けられるように協力を呼び掛けています4)。
風しんの感染防止に企業で取り組むことは、個々の従業員やその家族を感染から守るだけでなく、職場での集団感染発生という企業リスクを低下させる意味でも重要です。また、このことは顧客や取引先への感染拡大を防止することにつながり、企業の社会的責任という観点からも大きな意義があります。
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図1.年齢別風しん累積報告数割合(男女別) 2018年第1-52週(2917人)

- 国立感染症研究所感染症疫学センター 風しんに関する疫学情報(2019年1月7日現在)
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/190107/rubella190107.pdf - 1)国立感染症研究所疫学センター 風しんに関する疫学情報(2019年1月7日現在)
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/190107/rubella190107.pdf - 2)国立感染症研究所 職場における風しん対策ガイドライン 平成26年3月作成
- 3)外務省海外安全ホームページ 海外における麻しん(はしか)・風しんに関する注意喚起(その3)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2019C132.html - 4)厚生労働省 風しん対策(抗体検査)の実施率の向上策について(令和2年1月31日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09247.html