流行リスクを把握して早めに始めよう!
健康経営専門家と考える
2023/2024シーズンのインフルエンザ対策

2023.8.18

2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以降、2年にわたり認められずにいたインフルエンザの流行が、昨シーズン(2022/23)は3年ぶりに認められました(図1)。
今年は3月からマスク着用が個人裁量となり、国際的な人の往来も本格的に増加するなど、インフルエンザ流行に影響する要素が一層増えています。
今シーズン(2023/2024)のインフルエンザ対策に関する情報と、健康経営専門家とともに考える企業におけるインフルエンザ対策をまとめてお届けします。

1.感染症対策に求められる投資―予防接種

健康経営の専門家である岡田邦夫先生(特定非営利活動法人健康経営研究会理事長)に、企業におけるインフルエンザ対策の考え方を伺いました。
現在、COVID-19により事業活動に支障が出た経験を踏まえて、企業での感染症対策に対する意識は明らかに高まっています。
今後は、経済産業省が提唱する“人的資本経営”が重視され、従業員の健康に対する投資が企業価値を左右することも考えられます。企業が従業員に対してワクチンの職域接種や費用助成を行えば、従業員の企業に対するロイヤリティも高まるでしょう。
以前インフルエンザが流行した年に、中小企業経営者に対して合同研修を行ったことがあります。ある参加者から、従業員10人中8人がインフルエンザで欠勤となり大変だったという話がされました。一方、従業員に職域接種を行っていた企業では、欠勤は1人だけだったそうです。従業員の感染症予防に対する意識向上のためにも、企業で予防接種を勧奨することが必要です。
事業活動の継続と従業員ロイヤリティの両面から、“従業員の健康管理に投資する”という視点をもって、職場でのインフルエンザ予防・対策を検討することをお勧めします。

2.3年ぶりに全国で流行 流行長期化、学校での集団感染も発生

2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、2シーズン(2020/21、2021/22シーズン)続けて国内におけるインフルエンザの流行は認められませんでした。
一方、昨シーズン(2022/23)は12月末に3年ぶりに全国で流行入りし(感染症発生動向調査における定点あたりの報告件数が1.00を上回る状態)、2月上旬には1週間あたりの報告件数が今シーズン最多となる6万3千件を超え、流行のピークを迎えました。
通常、インフルエンザの流行は4~5月頃までですが、7月に入っても患者発生の報告が継続し、定点1医療機関あたりの報告件数は流行の目安の1.00を上回る異例の状態が続きました。全国の学校で季節性インフルエンザの大規模感染が確認され、体育祭のイベント前後の感染拡大により感染者が500人近く発生したケースもありました。
全国で「流行」目安を上回る状況で7月を迎えたことは、感染症法に基づく感染症発生動向調査が始まった1999年以来初めてです1)

図1 国内では流行が3年ぶりに発生

WHO, Global Influenza Surveillance and Response System(GISRS)2)インフルエンザ臨床検査サーベイランス情報2023
(2023年8月7日閲覧)より作成

世界ではCOVID-19前を上回る陽性数

海外でもCOVID-19流行後、2020/21シーズンには抑制されていたインフルエンザの流行が、2021/22または2022/23シーズンに再び認められています3

世界全体では、インフルエンザ陽性数は2020年のCOVID-19流行期以前を上回る陽性数が報告されました(図2)。

※インフルエンザに陽性を示した検体数

図2 世界全体ではCOVID-19前を上回る陽性数

WHO, Global Influenza Surveillance and Response System(GISRS)2)インフルエンザ臨床検査サーベイランス情報2023
(2023年8月7日閲覧)より作成

3.今シーズンもより一層の警戒を

今年3月からマスク着用は個人裁量となり、5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけがインフルエンザと同じ第5類に変更されました。これに伴い、マスク着用やその他の手洗い消毒などの感染対策の実施頻度が低下し、インフルエンザ感染のリスクが高まることが考えられます。

インバウンド/アウトバウンドの増加

インフルエンザウイルスは世界中で常時存在しますが、北半球では12~3月、南半球では6~9月頃に流行がピークとなります。赤道周辺では明瞭なピークを形成せず、通年性に発生します。日本では冬に流行しますが、夏であっても(南半球の国など)海外からの渡航者により持ち込まれることがあります4)
今年は既に4月時点でインバウンド/アウトバウンドの規模が昨年1年間を上回りました(図3)。5月には海外渡航の制限が撤廃されたため、今後も国際的な人の往来の増加が見込まれます。

出入国在留管理庁 出入国管理統計より作成(2023年7月18日時点)

図3 今後も増加が見込まれる海外往来人数

南半球の流行状況

今シーズンのインフルエンザの流行を予測する上で、南半球の流行状況は参考になります5)
2023年7月時点、オーストラリアではインフルエンザの陽性者数が過去5年平均を上回るペースで推移しており6)、南部アフリカでは昨シーズンを上回る陽性者数が報告されています7)
これらの点に鑑み、今シーズン(2023/2024)においてもインフルエンザワクチンの接種を完了しておくことが、一人ひとりの発症リスク・重症化リスクを抑え、流行を防ぐために重要と考えられます8)

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参考文献

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