”季節性インフルエンザ”

風邪症状に加えて倦怠感などの全身症状が強い

季節性インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで発症する感染症です。
主な感染経路は

  • 咳やくしゃみ、会話などで発生する飛沫を介した感染(飛沫感染)
  • ウイルスが付着したものに触れた手で口や鼻、眼などの粘膜に触れることでの感染(接触感染)

があります。

季節性インフルエンザウイルスの感染経路
図:季節性インフルエンザウイルスの感染経路

インフルエンザウイルスは、1人の感染者から免疫のない2~3人に感染させる程度の感染力を持つとされており1)、職場内の流行を防ぐためには予防対策を講じることが重要です。

季節性インフルエンザウイルスの感染力
図:季節性インフルエンザウイルスの感染力

通常、インフルエンザウイルスに感染すると、1~3日間程度の潜伏期間を経た後に発熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感などが現れ、続いて一般的な風邪と同じような症状(のどの痛みや鼻水、咳など)が見られます。患者の多くは1週間前後で軽快しますが、季節性インフルエンザは風邪と比べると全身症状が強く、重くなりやすい病気だといえます2)

季節性インフルエンザの原因ウイルスにはA型やB型、C型がありますが、大きな流行の原因となっているのはA型のうちA(H1N1)亜型とA(H3N2)亜型、そしてB型(山形系統、ビクトリア系統)の4種類です。3)

季節性インフルエンザは毎年、世界各地で流行しています。わが国では例年、11月下旬から12月上旬頃に流行が始まり、翌年1~3月頃に患者数が増加し、4~5月に減少しています。ただ、その年によって流行が始まる時期やピークの時期、流行の程度は異なることもあります。2)

なお、コロナ禍以前におけるわが国の季節性インフルエンザの感染者数は年間約1000万人と推定されています。また、季節性インフルエンザの流行が直接的または間接的にもたらした死亡者数(超過死亡)は年間約1万人と推計されています4)

季節性インフルエンザは、全ての年齢層の人に感染する可能性があります。しかし、とくに高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者さんでは、原疾患が悪化するとともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなり、入院や死亡の危険が増加することが知られています2)

インフルエンザ予防にはワクチンがあります

では、季節性インフルエンザにかからないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。季節性インフルエンザの予防策としてはまず、手洗いなどでウイルスを洗い流すことが考えられますが、流行前に季節性インフルエンザワクチンを接種することも候補として挙げられます。
季節性インフルエンザワクチンの接種は、季節性インフルエンザの発病や重症化のリスクを低下させます。なお、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率について、以下のデータがあります。

  • 6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発症防止に対して60%の有効率あり5)
  • 高齢者福祉施設に入所している65歳以上の高齢者については、34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果あり6)

なお、有効率60%とは、「ワクチンを接種せずに発病した方のうち60%は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができた」という意味です。7)

インフルエンザウイルスは毎年変異しながら流行するため、毎年、そのシーズンに流行すると予測された型のウイルスを使ってワクチンは製造されます。その効果は、接種後2週間から5カ月(基礎疾患の有無、流行ウイルスの変異程度によって変動あり)と言われており、たとえワクチン株が前年と同様のものであっても、毎年の接種が必要です7)。なお、65歳以上の方、60~64歳で重症化リスクが高い方は、定期接種の対象となっています。

季節性インフルエンザワクチンの定期接種対象者(高齢で重症化リスクの高い方)
  1. 65歳以上の方。
  2. 60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活を極度に制限される方。
  3. 60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方。

また、インフルエンザワクチンについて、成人には各シーズン1回接種を原則としています。
ワクチンの添付文書には「13歳以上のものは1回または2回注射」と記載されていますが、健康な成人の方や基礎疾患(慢性疾患)のある方を対象に行われた研究から、インフルエンザワクチン0.5mLの1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとの報告7)があります。(ただし、医学的な理由により、医師が2回接種を必要と判断した場合は、その限りではありません。)
なお、65歳以上の方、60~64歳で重症化リスクが高い方に対する定期接種は、各シーズン1回の接種としています。7)

インフルエンザと確定診断されていなくても、前述したようなインフルエンザを疑う症状が見られるときにはマスクを着用し、咳をするときにはティッシュやハンカチで口を覆うなどの咳エチケットを守り、周囲の人への飛沫感染を防ぐことが大切です。
外出から戻ったとき、食事の前、乳幼児や高齢者と接触する際など、日常生活の中で手洗いの習慣をつけることも接触感染の予防につながります。

  • 1)国立感染症研究所 感染症情報センター わが国におけるプレパンデミックワクチン開発の現状と臨床研究(2008.9.18)
  • 2)国立感染症研究所 インフルエンザとは
  • 3)厚生労働省 インフルエンザの基礎知識(平成19年12月)
  • 4)厚生労働省 新型インフルエンザに関するQ&A
  • 5)平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究(研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))」
  • 6)平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」
  • 7)厚生労働省 インフルエンザQ&A
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